裏口入学に続いて、東京医科大学が女子受験者の点数を不当に下げていたことが明らかになった。
なぜこのような女子排除がおこるのか?医学生が解説する。
※今回の記事は、医学部の経営、運営目線で書いています。筆者の意見ではないので注意。
↓医療崩壊についての記事はこちら
総論
女性は男性とは違う。
妊娠、出産という生物学的に女性しか行うことのできない事があるからだ。
特に35歳までには子供をほしいという女性も多く、これが医師のキャリアと絶望的にマッチしない。
医師のキャリアと女性の働き方が噛み合わない理由の全てはこれに起因する。
さらに体力的にもハードな仕事を求められることも多い。
一般的な企業なら、総合職と一般職という分け方であったり、パートなどの区分を用いてこれらの差をコントロールしている。
しかし医者は医師免許を取ったら誰でも同じ仕事をすることができるので、総合職と一般職のように差をつけることができない。そのため今回のような水面下の差別が生まれてしまった。
上の記事でも述べたが、最近では女子医学生の割合が著しく増加している。
ここに東京医科大学の上層部は危機感を抱いたのだろう。
マイナー科に進む
女子医学生は女医になってからマイナー科といわれる科に進むことが多い。
マイナー科とは皮膚科、眼科、精神科、麻酔科などを指し、比較的自分のプライベートと仕事を両立したりすることができる科が多い。
特に最近の新専門医制度の改悪もあり、内科からマイナー科に鞍替えしている女医も増えている。
その理由は単純で、メジャー科(外科、内科)に行くと出産や育児といったことに時間を割けなくなるからだ。
※新専門医制度では内科に行くと30歳になっても専門医が取れない
↓新専門医制度についての記事はこちら
産婦人科や小児科、救急が激務なのは一般的にも知られている。しかし、内科であっても日本は主治医制があるために自分の都合では休めなくなる。
※主治医制:一人の医者が決まった患者を担当すること
特にメジャー科はオンコール制度という、急患に備えていつでも待機して置かなければならない制度があるために出産や育児と両立して仕事を行うということが非常に困難になっている。
さらに当直という病院に寝泊まりして過ごす勤務もあり、これが育児をする女性にとってどれだけ過酷なものであるかは想像に難くない。
そのため一般的に激務といわれる科は負担増→人手不足→負担増と負のループをたどっているのである。
しかし、マイナー科であっても出産や育児で抜ける穴を埋めるのは他の男性医師である。
これは医者だけの問題ではなく、そもそも女性の社会進出に関する問題なのだ。
アカデミックに進まない
東京医科大学をはじめとする医学部関係者が最も杞憂しているのはこの部分があるのではないかと考えられる。
アカデミックとは研究職、つまり教授をトップとする研究室、医局に進むこと。
最近では医師国家試験の合格者の女性比率が30%超と過去最高となった。
https://www.med.or.jp/joseiishi/h26_daigakugakkai_2-5.pdf
しかしこの資料によると、教授以上のポストに付いている女性医師の数はなんと2.5%という数になっている。
教授職に占める女性割合は驚くほど少ないのだ。
特に基礎系は教授以外でも男性が圧倒的多数になる。
その理由はいくつかある。
まず第一にアカデミックな分野に進もうと思ったら留学が必須である。
教授になろうとすれば、留学経験が必ずといっていいほど求められる。
先程の専門医制度と合わさって、教授になろうとすれば高齢出産を覚悟するか、あるいは子供を持つことすら諦めなけらばならなくなる。
つまり単にメジャー科に進むより険しい道のりがアカデミックには待っているということだ。※そのため男子でもアカデミックに進む人は激減している
つまり、女性を多く入れると研究職に進まない卒業生が増えて、自大学の研究室を生え抜きで揃えるということができなくなってしまうのだ。
これが進むとどうなるか?
自大学の教授を生え抜きで揃えられないということになる。
これまで、旧帝大学以外の新設の医学部は、自大学の教授を生え抜きで揃えることに必死になってきた。
どの医学部にしろ、最終的には自大学出身者を優遇する。
自大学出身者で教授が揃えられなくなると、旧帝大学の植民地時代に逆戻りしてしまう。そんな不安が教授陣にはあったのではないか。
医者や医学部の世界というのは良くも悪くも未だに封建社会のようなムラ社会の場合が多い。
同大学出身者だから優遇する、同大学出身者だからポストを与えるなどなど。
これが学閥と呼ばれるものだ。
既得権益が侵される不安が教授陣にはあったのではないだろうか。
経営面
医学部の場合、後期研修以降は出身大学に戻るケースが多い。
そのため、学生が将来の病院の職員となる場合が多いのだが、この時に女医の割合が高いと経営が困難になる可能性もある。
出産や育児では職場を離れざるをえなくなるし、先程も言ったようにアカデミックに進む人が少ないので自ずと大学に残る人も減る。
国公立では税金によって経営がバックアップされているが、私立の場合は全て経営を自己責任で行わなければならない。
そのため、私立大学ではある意味資本主義的な人事が働いてしまったのだろう。
どのように女子を排除してきたか
東京医科大学は女子の点数を一律に下げるという露骨でわかりやすい方法をとったが、多かれ少なかれ医学部(教授)は女子の比率を下げようとしていることは間違いない。
女子比率を下げる一番簡単な方法は、入試で数学と物理を課すことである。
正直言って、医学部に入った後は数学や物理はほとんど用いないが、それでも入試の重要科目として課されている。
「女性比率を減らすために生物を難しくしている」と教授から聞いたという匿名の情報も得られた。
ただし、全ての医学部がこのような不正を行っているわけではないし、
東京医大以外でも「女子合格率、医学部だけ低いのは不自然」女性医師が指摘
↑のような指摘は間違っている。
なぜなら、東大の女子比率も一般大学と比べて少ないからだ。(特に理系は)
最後に
筆者は特にどちらの肩を持っているわけではない。
女子受験者や女性医師にとっては許しがたい行為であることは理解できるし、そもそもこの時代に女性差別をしていること時代がナンセンスだ。
同級生を見ても、女性は優秀な場合も多いし今後も女性医師の需要は伸びていくことは間違いないだろう。
一方で、男性医師目線では↓のような意見もある。
この問題については注視していきたいところだ。