暇な医者の戯言

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漫画村閉鎖について真面目に考察してみた

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先日閉鎖した漫画村。

アクセス数は月間1億PVにおよび、老若男女問わず使用されていたある意味国民的サイトだ。

先代ともいえるフリーブックスから続く、この海賊版サイトの流れ。

その根底にあるものを考察したいと思う。

 

 

音楽業界の場合

まず、他業界との比較から始めたい。

音楽業界は、出版業界以上に違法ダウンロードに苦しめられていた業界であった。一曲のデータ容量が少ないことに加え、MP4という拡張子で統一されていたからだ。

CDをパソコンに入れれば、そのまま情報を抜き取れたのも大きい。漫画などの書籍は一枚一枚スキャンする必要がある。

JASRACと共に政治的ロビー活動(ダウンロード違法化など)を用いて、せっせと客を囲っていた日本の音楽業界。

そんな事お構い無しでCD売上は1998年をピークに右肩下がりで下がり続けた。

しかし、Appleという黒船の登場により大きく舵を切らざるを得なくなった。AppleのiTunes上で音楽の販売が行われるようになったからだ。

すなわち、CDを売って儲けるというこれまでの業態が完全に破壊されたのである。

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↑アメリカの音楽の売上の内訳。CD(Physical)の割合が減り、デジタルの割合が増加。

 

iPodという圧倒的なハードウェアとiTunesというソフトウェアによって、音楽業界を手中の収めたAppleに音楽業界は従わざるを得なくなったのだ。

現在のアメリカは、YoutubeなどにPVを載せてライブなどで稼ぐというスタイルを取っている。無料でコンテンツを載せて広告費で稼ぐYoutuberとどこか似ている。

 また、Apple Musicやspotifyのように、月の定額制で聴き放題というサービスに移行し始めている。音楽業界は変わりつつあるのだ。

出版業界の場合

出版業界は殿様商売がまかり通る職種だった。本屋は本を陳列しておくだけでいいし、大手出版社には小説や漫画を持ち込んでくる人が絶えない。

本は再販制度といって定価で販売することが決められており、値下げ競争にもならない。すなわち市場原理が機能しないため、大手書店も個人書店も同じ値段で本を売れたのだ。

さらに、書店で売れなかった本は出版社に返品することもできたので、個人書店も生き残ってこれたのである。

堀江貴文氏曰く「本屋は金持ちの道楽」。ある意味、左うちわの業界だったのだ。(参考までに講談社の平均年収は1000万超とのこと)

しかし、この硬直化した業界のシステムが後に悲劇をもたらすことになる。

 

音楽業界がAppleという黒船によって激変したとすれば、出版業界を激変させた黒船はAmazonだろう。

今や世界最大の小売ともいえるAmazon。まず淘汰されたのは、個人書店であった。

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↑書店数、出版社数共に激減中

ここで再販制度が仇になった。

Amazonで買っても、本屋で買っても、値段が同じなら家まで届けてくれて楽だからAmazonでいいや♪という人が増えていったのだ。

更に書店で在庫がない場合、取り寄せには数日~数週間かかるためネット通販の利便性に気づいた客はより一層離れていった。

旧態依然とした業界なので、電子書籍の対応も遅れた。

各社で自社規格の電子書籍を乱立していくうちに、Amazonの電子書籍kindleにすべてを持っていかれてしまった。

更に、電子書籍は印刷代、流通費、人件費、その他の費用がかからないにも関わらず、日本では書籍と電子書籍の値段差が殆ど無い。

このような客の方向を向かない明後日なサービスによって、ユーザーのフラストレーションが溜まっていったのだ。

 

漫画村の台頭

漫画村以前にも、漫画をネットでダウンロードすることは可能であった。しかし、極一部のパソコンユーザー(割れ厨)が利用するのみで、一般的に普及していたわけではない。

漫画村はブラウザで閲覧できる利便性と、圧倒的なUIで爆発的にユーザーを増やしていったのである。

以下の記事が非常にわかりやすい。

anond.hatelabo.jp

 漫画村は無料だから普及したわけではなく、無料かつ既存の電子書籍より使い勝手がいいから普及したのである。

 

政府による規制

言論の自由の集大成ともいえるインターネット。しかし、ここに来て風向きが怪しくなってきた。

海賊版を撲滅する、との名の下に政府主導のブロッキングが始まるからだ。

「違法サイトをブロッキングするだけでしょ?何が悪いのw」と思う人もいるだろう。

しかし、規制は突きやすいところから行うものである。

労働者の派遣を当初一部労働者に限るとしてたのを、なし崩し的に多職種の労働者の派遣も可能にしたのは記憶に新しい。

海賊版載せているからブロッキングするということは、すなわちYoutubeやニコニコ動画、Twitterすらもブロッキングが可能になるということである。

その後は、反政府的な危険集団がやり取りしてるから有害ページ指定!などと対象の幅が広がっていくことは想像に難くない。

正論で規制を導入し、暴論で規制を拡大していくのが権力者のやり方なのだ。

 

解決策

日本の出版業界は、音楽業界を見倣うべきだ。

人口減少が始まり、賃金も低下し、娯楽が多様化してるこの時代に15分あれば読めてしまう一冊400円の漫画で商売することは困難である。

そもそも漫画村がだめで、ブックオフの立ち読みや漫画喫茶が許される理由は?

現在のビジネスモデルの主流は、無料でコンテンツを提供し広告費で回収するというスタイルを取っている。

出版業界は、このようなビジネスモデルかApple MusicやSpotifyのように、定額で読み放題サービスを導入するしか生き残る方法はないだろう。